ちょっと書評的に書くことをチャレンジしてみる。
文章と向き合うという点で非常に興味深い本。
「文章と対話する」とはこういうことを言うのだろう。
本書では、日本語の正しさではなく分かりやすさという観点から文章を紐解いていく。
軸となるが「語順、読点」だ。
「語順」はいわば修飾・非修飾の関係を示す構文のこと。
次の原則がある。
- 節を先に、句を後に。
- 長い修飾は先に、短い修飾は後に。
- 大状況から小状況へ、重大なものから重大でないものへ。
この順番を守っていると文章の分かりやすさが保たれる。
逆にいうとこの原則を破るから分かりづらくなるのだ。
一般的に言われる部分でもあるのでこれは意識している人も多いと思う。
ちゃんとできているかどうかは別なのが辛いところだが…
次に「読点」。
「読点」はいわゆる句読点「、。」での「、(テン)」の方を指す。
ここで「読点」の重要さと共にいかに自分が適当だったか思い知らされた。
読点は構文のための論理的役割を担っているというのだ。
無闇やたらに感覚で「、(テン)」を打ってしまうと構文の論理が崩れてしまう。
だから分かりづらくなってしまう。
基本的に論理性が保たれているのであればテンは要らない。
本当に必要なときだけテンを打つ。
文章を作っているとき、
ルール的なものがあるはずなんだけど、どうしたもんか
というのも朧げながら感じていて、今までまさに感覚でテンを打っていた。
目から鱗だった。
そして、本書は例文と回答文の質が高い。
誰も使わない例を引き合いに出し、使えそうで使えない解決案を提示する、
よくあるビジネス書とは違う。
主張を強調するために作られた文章ではなく、新聞や雑誌の文書を引用しながら時には自分の文章も用いて、
「なぜダメなのか、どうすれば良くなるのか」を論理的に説明する。
細かすぎてクドいと感じる部分もあるが、自分に必要な箇所だけ抽出すればタメになる。
P.S.
このシリーズには、無印の「日本語の作文記述」と実践編にあたる「実践・日本語の作文記述」の2つがある。
「実践」は技術面と思想面で構成されていて、技術面では無印のまとめ的な内容、
思想面では日本語論という名目で著者の考えが述べられる。
実践というほど練習問題が多いという訳でもないので、「復習」の方が内容に近いという印象を受けた。
新しい知識を求めているのであれば、技術面のアップデートはないので「実践編」は買わなくてよいかと思う。
後半の日本語論では正直こだわりが強すぎて胸焼けしてしまう。
一つの視点としては参考になるけれども、個人的にはちょいと偏狭すぎた。
文章作成という面では「分かりやすさ」のお手本だったが、
思想という面では「分かりやすさ」がなく、自分自身が悪文ならぬ悪思想に該当してしまっている。
視野が狭く頑固になっていないか。
反面教師として、そして自戒も込めて「人の振り見て我が振り直せ」の実践が必要だ。
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